ハノイは漢字で書くと河内となるように川に囲まれた町。ハノイの中心を取り囲むように流れる紅河は敵の侵入から守る自然の濠でもあった。その紅河に橋が架けられたのはフランス植民地時代のことだ。
ロンビエン橋とは
現在、ハノイ市内を流れる紅河には7つの大きな橋が架かっている。この7つの橋を上流から下流の順に並べてみる。
橋の名前 | ベトナム語 | 開通時期 | 長さ |
ヴィンティン橋 | Cầu Vĩnh Thịnh | 2014 | 4480m |
タンロン橋 | Cầu Thăng Long | 1985 | 3500m |
ニャッタン橋 | Cầu Nhật Tân | 2015 | 3900m |
ロンビエン橋 | Cầu Long Biên | 1902 | 1700m |
チュンズーン橋 | Cầu Chương Dương | 1985 | 1230m |
ヴィントゥイ橋 | Cầu Vĩnh Tuy | 2010 | 3690m |
タンチー橋 | Cầu Thanh Trì | 2007 | 3084m |
ロンビエン橋はハノイ市内を流れる紅河に架かる橋のうちで、圧倒的に古い鉄橋。
中央に鉄道、左右にバイクや自転車道が設けられ、歩道もある。自動車は通行不可。
その歴史を遡ると

By: manhhai
ロンビエン橋はフランス植民地時代の1897年から1902年の5年間、当時のインドシナ総督ポール・ドゥメールの命によりトンキン湾の港町ハイフォンとハノイを鉄道で結ぶために造られた。
パリのエッフェル塔を設計したG・エッフェルが設計したという説もあるが、これは俗説に過ぎない。史実を辿ると、エッフェルの経営していた会社は建設工事入札の行われる4年前にすでにこの案件から引き揚げている。
実際には、1897年に行われた建設工事入札で6社が参加し、それぞれA案とB案を提出したが、ダイデ&ピル (Dayde et Pille)社の提出したB案が採用された。当初5年で計画された建設は、実際には1899年に着工、3年9か月後の1902年に竣工した。
完成時はインドシナ総督の名をとり「ドゥメール橋」と命名された。第2次大戦後、現在のロンビエン橋に改名されている。ロンビエン(龍編)は、「龍が躍る」の意味。
構造は鉄骨によるトラス構造で、エッフェル塔を連想させる優美な曲線も併せ持つことから、「横にしたエッフェル塔」とも呼ばれる。
ベトナム戦争中には米軍から爆撃を受け、中央付近の山形が破壊されている。近年、老朽化し、修復が検討されている。

By: Photo HunterVN
上記7本の橋の中でも断然の歴史を持ち、その独特の姿が絵になるのがこの橋。瀕死の重傷を負いながらも耐え忍ぶ老兵の姿を髣髴させてくれる。
インスタ映えするこの橋を撮るにはいくつかのスポットがあるが、旧市街側と対岸側のスポットをいくつか紹介しておく。
雨上がりの日曜日の朝、ロンビエン橋のたもとにある隠れ家カフェにてくつろぐ
先の日曜日の朝、旧市街を散策した後で、ロンビエン橋のたもとにあると聞いていた隠れ家カフェに足を運んでみた。隠れ家と言っても地元客にはすでに知られた場所だったので、雨の日のほうが人手が少なくてかえって好都合ではないかと考えていた。
ドンスアン市場の裏手を抜けて、鉄道の高架の下を潜り抜けると右手に折れる。紅河の堤防上の道沿いに出る。
目指すカフェSerein Cafe & Loungeはすぐそこだ。
ビルは4階建てで、カフェは3階と4階を占めていた。
3階に上がって、カプチーノを注文した後で、4階へ上がった。
目指したテーブルがそこにあった。
雨が上がったばかりで、まだ誰もいない。
バルコニー席に陣取り、写真を何枚も撮った。
そして、そのうちの一枚が下の写真だ。
ここから撮るロンビエン橋の写真はどれも素敵だ。
誰もがインスタに上げたくなるのはわかる気がする。
しばらくすると、列車が通りはじめた。1日に数本しか列車なので、貴重な瞬間だ。

カプチーノ 80,000ドン @Serein Cafe & Lounge
バルコニー席は橋が間近に見えて、もちろん素敵なのだが、小雨が降ってきたので、室内のテーブルに移った。
昼過ぎて、ようやく客が入りだした。
頃合いを見て、店を出た。
後から知ったのだが、店の屋上がテラスになっていて、こちらも人気らしかった。
インスタを見ると、多くの人がここで写真を撮っている。
今度行くときには、屋上にも上がってみよう。
対岸上空からロンビエン橋を見下ろせるMipec Trade Center Long Bien

橋の右手奥に見えるのがMipec
今はもうハノイに住み着いてしまったが、出張ベースで来ていた時によく泊まったのが、ロンビエン橋の向こうに聳え立つMipec Trade Center Long Bienという複合ビルだ。
車で移動だと、生憎ロンビエン橋は通れないが、チュンズーン橋経由でも旧市街まではわずか10-15分ほどの便利な位置にある。
ビルの下のほう6階までが商業施設になっていて、スーパーやレストランが入っている。7階より上は住居スペースで、ここの物件がAIRBNBにいくつも出ている。
紅河を見渡せるMipecの部屋
部屋はベッドルーム1室あるいは2室のものが多い。
川向うは遠いという印象からか、宿泊料金はかなり安めの印象。
部屋にもよるが高層階だとかなり見晴らしがいい。
ほぼ真下のロンビエン橋もちろんのこと、向きによってはチュンズーン橋も、また、天気のいい日はさらには遠くのニャッタン橋まで見える。

Mipecから見下ろした朝のチュンズーン橋

夜、Mipecからニャッタン橋を望む
さらに橋を体感したいなら、現場に飛び出そう
以上2つの穴場スポットを先に紹介したいのだが、ではメインのスポットは言うと…
インスタで#longbienbridgeとハッシュタグ検索をかけると、圧倒的に多いのが線路上の写真だ。
ベトナムの鉄道はおおらかと言うか、線路内に人が侵入しても、特別に咎められることはない。
加えて、走る列車の本数も少ないので、危険という感覚がないのだろう。
線路内で堂々と写真を撮っている人がいくらでもいる。
さらに、この橋はバイクでも通れるし、歩道があるので、歩いても渡れる。

バイクや歩道は一般道とは異なり左側通行
実は、以前、前述のMipecに友人と泊ったとき、ロンビエン橋を向こう岸まで渡ろうと誘われたことがある。
歩道はバイクの走るレーンのさらに外側にあって、手摺りは腰のあたりまでしかない。
恥ずかしながら、歩道橋ですら、できたら渡りたくないくらい極度の高所恐怖症の私は10mも行かないくらいで足がすくんでしまい、引き返した。
友人はというとちょうど中間地点あたりまで行ったが、向こう岸まで行くと帰ってくるのに時間がかかるからと、引き返してきた。
曰く、中間地点に階段があって、下の中洲まで下りられるようになっているのだそうだ。
想像しただけでも、ぞっとする。
今日またチュンズーン橋を渡りつつ、横目にロンビエン橋を眺めてみたが、ちょっとうらびれた姿が郷愁を誘い、歴史あるハノイの町にいることを強く実感させてくれるのだった。

By: shankar s.
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