朝早く市場に行って買物をする。
朝食に食べる果物をはじめ、肉や野菜など生鮮食料はスーパーで買うより市場で買いたい。
現地直送だから新鮮だ。その中でも鮮度のいいものを選んで買うようにしている。
スーパーのように黙って籠に入れ、レジに持って行って、会計というのは味気なくて、せっかくベトナムにいるのだからと、好んで市場で買物をする。
実のところ、一人暮らしが始まって、最初、買物に出かけだしたころは、苦手だった。食料だけに限らず、だいたいにして買物自体が苦手な性分だ。
あちらこちらに目当てのものがあると、目移りして、決められない。決めて買って、その後、いいものを見つけると悔しくなる。
あるいは、物売りが高値で買わせようとするのではないかと疑心暗鬼になるのも気持ちよくない。
でも、毎日市場に通っていると、だんだんとわかってくることがある。
相場が掴めて、それぞれの物売りのことがわかってくる。
そうなってくると、それぞれの物売りの顔を見て買物をするようになる。
「顔に出る」とはよく言ったもので、意地悪なおばさんは意地悪な顔をしているし、人の好いおばさんは人のいい顔をしているものだ。
ひょっとして勘違いなのかもしれないが、それでもいいじゃないか。
毎日の買物だから、そうやって自分なりに決めていくことが肝心なのだ。
卵はここ、魚はあそこ、豚肉は向こうと、少しずつ贔屓にする店もできてきて、最近ではすっかり慣れてきた。
毎日毎日市場に出てきて野菜を売っている年配のおばさんの姿を見ると、戦後野菜の行商をして母や叔母を育てていたという、亡くなった祖母のことが思い出される。
暮らしの原点は市場にある。
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